こんにちは。スタディサプリ小中高のWebアプリの開発を担当している @kiki-ki と tsukamoto です。
スタディサプリでは5年ほど前からCXプラットフォームとして KARTE という外部サービスを利用しています。本記事では私たちのチームでのKARTEの活用方法について紹介します。
はじめに: KARTE導入の背景
KARTEの機能についての詳細は割愛します。公式の サービスページ を参照ください。
KARTEではユーザーの属性やアクションに合わせて接客内容をリアルタイムに変化させることができます。この機能を利用して、スタディサプリでのユーザー体験の向上を目指しプッシュ通知やポップアップの機能を強化することが、KARTE導入の背景でした。
プロダクト内にも既存でプッシュ通知やポップアップをするための実装はありましたが、ユーザーの細かなアクションによってユーザー体験を変化させたい場合、追加実装や管理に都度コストがかかります。また、ユーザーとコンタクトする機能は、開発以外のメンバーで発火タイミングや内容について調整したい場合も多いため、開発へ変更を依頼するコストや管理機能の実装コストを考えると、KARTEを活用して柔軟なUIから開発以外のメンバーでも変更できる状態にするのが効率的だと考えました。
上述の背景で導入したKARTEでしたが、現在は活用の幅が広がっています。 スタディサプリでの活用例をいくつかご紹介します。
スタディサプリでの活用事例
プレトタイピング
前章で話した通り、KARTEではアプリ向けのプッシュ通知の配信とポップアップ・バナーの管理などができるのですが、それらを組み合わせてプレトタイピングを実施しています。
プレトタイピングとは、アプリやサービスのアイデアを具体化する前に、簡易的なプロトタイプを作成し、ユーザーの反応やフィードバックを得る手法です。これにより、開発の初期段階でのリスクを軽減し、必要な機能や改善点を明確にすることができます。
新しい機能の企画に対して、まずはKARTEを利用した検証から始めることで、「その機能がユーザーにとってどれほどの価値を持つのか」を低いコストで検証しています。内製開発でも同じ機能を実現できますが、KARTEで実施できればプランナーですべて完結するため、内製開発より早くユーザに価値を届けることができます。また、先に外部ツールを利用してシステムに足しやすく、引きやすい形で小さく検証することで、検証結果が良好であればその後の内製開発の動機とできる一方で、検証結果が振るわなければ少ない手戻りで撤収することができ、その後大きな開発コストをかけて内製実装することに対するリスクの軽減にもなっています。
この取り組みを始めて、副次的な効果として 内製開発より「本当に検証したかったこと」に絞った検証ができているのではないか。と考えています。 これまで「何か」を検証するときに、「ついでに」とやることが増えていき、実装工数も膨らみ、実施までのリードタイムが長くなることがありました。外部サービスを利用する場合、内製開発と比べるとさまざまな制約がありますが、その制約の中で、設計を考えることで「これは不要では?」という意識が働き、小さく・早く届けることが実現できていると感じています。
ABテストでの活用
KARTEではアプリに未登録状態で訪問したユーザーとその後登録が完了してIDが割り振られたユーザーとの情報を統合して同一のユーザーとして分析を行えます(公式ドキュメント)。この仕様により、ユーザー登録前後のトラッキングをKARTE上で一気通貫して実施できます。
また、行動チェーン (現在はベータ版)という機能があり、ユーザーの複数の行動を1つの流れとして構築した分析を行うことができます。
スタディサプリではアプリからBigQueryにイベントデータを連携して分析を行うことが多いのですが、直近で実施したユーザー登録動線におけるUIの新旧パターンのABテストには、登録前後のトラッキングが簡単に行える点で相性が良さそうだったためKARTEを利用しました。

アプリ側の実装としては、表示したABパターンの情報をアプリからKARTEにイベントとして連携するのみで、あとはKARTE上で既存で連携していたページビュー等のイベントの情報と組み合わせて各フェーズの突破率を計測することができました。
KARTEに連携するデータを制限しているため、アプリ固有のデータを用いた分析はKARTE上でできませんが、表示パターンによるページ突破率の計測などシンプルな分析をしたい場合には、低い実装コストで実現できて便利だと感じました。
また、BigQueryから分析を行う場合にはクエリを書く必要がありますが、KARTEでは分析の設定や確認がUI上で行えます。エンジニア以外のメンバーとも編集やレビュー作業の共同がしやすくこちらも良い点と感じました。
終わりに
今回はスタディサプリでのCXプラットフォームKARTEの活用方法について紹介しました。
ご紹介した通り、内製開発と外部ツール利用をうまく組み合わせることで低コストでユーザー価値の高い、コストパフォーマンスの良い機能開発ができるのではないかと思っています。 KARTEは非常に多機能なサービスで、記載した使い方の他にも便利な使い方が多くありそうです。 引き続き、他の用法も探っていきたいと思います。
本記事が、KARTEの導入や活用を考えられている方や、内製開発と外部ツール利用のバランスを考えられている方の参考になれば幸いです。