スタディサプリ Product Team Blog

株式会社リクルートが開発するスタディサプリのプロダクトチームのブログです

Engineering Manager のしごと - スタディサプリ小中高 SRE チームの場合 -

こんにちは。SRE Team の @chaspy です。次の10月で Engineering Manager をつとめて1年になります。

本記事ではもしかするとメンバーからわかりづらい Engineering Manager のしごとについて、昨年10月からの約1年間を振り返りながら説明しようと思います。

ところで「エンジニアリングマネージャのしごと」もうすぐ発売ですね。筆者もとても楽しみにしています。検索のノイズになるのは本意ではないので記事のタイトルはカタカナではなく英語表記にしました。

www.oreilly.co.jp

なお、リクルートでは人事制度上 "Engineering Manager" というロールはなく、GM (Group Manager) が正式なロールです。EM と GM は重複する部分、そうでない部分ありますが本記事では割愛します。

基本情報

会社組織編

リクルートという大きな会社の中に、社長からいくつか階層ツリーをくだると「スタディサプリ」を扱う「まなび」という領域のプロダクトのユニットがあり、その中でも「進路領域」「小中高領域」「社会人・語学領域(English)」に分けられます。私はこの「小中高領域」を扱う部に所属しています。社内では K12*1 と呼んだりします。

リクルート
  |__ (いくつかの階層)
    |__ 販促領域プロダクトディベロップメント3ユニット(まなび)
      |__ (進路領域)
      |__ 小中高プロダクト開発部
      |__ まなび社会人・語学プロダクト開発部

この小中高プロダクト開発部もかなり大きい組織*2です。いい感じの図があったので載せます。

それぞれのプロダクトについてはブランドサイトをご覧ください。

brand.studysapuri.jp

SRE Team 編

そういうわけで僕は先ほどの図の"横断"の枠にある SRE チームの Engineering Manager をしています。この図に掲載されているほとんど*3のプロダクト信頼性や生産性を支えるための Platform づくりや、Security の対応を行なっています。また、この図には乗っていませんが海外事業である Quipper の Platform も同時に担当しています。

チームのビジョン・ミッション・バリューを含めた Job Description は以下にあります。

brand.studysapuri.jp

自己完結チームがプロダクトを素早く安全に届け続けるためのプラットフォームと文化を作る ことをミッションに日々楽しくお仕事をしています。

現在、私含めて7名のチームで、うちセキュリティに特化した Product Security Engineer*4 として入社された方や、海外事業の SRE Team 立ち上げの Manager をやっている方も含まれます。

Engineering Manager のしごと

Engineering Manager のしごとといっても、Engineering Manager "にしか"できない仕事はそう多くありません。まずはそちらから紹介します。

Engineering Manager にしかできないしごと

採用時のオファー額決定

採用活動はマネジメントの業務の中でもリードタイムが長く、採れない場合のインパクトも大きいことから重要業務の1つですが、採用活動自体はメンバー全員で書類選考、面接対応を行なっています。

ただ、そのプロセスのうち最後のオファー額 = 入社後のグレード*5決定は Engineering Manager のみが行えます。

そのため、なるべく確からしい決断をするために、Engineering Manager は面接の全プロセスに参加しています。

メンバーの評価・グレード・ミッション設定

いわゆる People Management と呼ばれる領域です。そのうち、社内人事制度に則って、報酬に影響する部分は Engineering Manager にしかできません。

リクルートでは半年ごとに人事評価が行われます。期の最初にグレードを設定します。これは期待する仕事のレベルに合わせて決定されます。その後、そのグレードに沿ったミッションが個人に設定されます。そして期末に評価が行われます。

一定金額以下の経費精算承認

決められた額以下の経費精算の承認権限があります。


実は権限上 Engineering Manager にしかできないしごとはこれだけです。つまり、人事評価に関わる部分と経費精算承認のみです。

とはいえ、それ以外でも事実上 Engineering Manager に期待する仕事はあるので説明します。

その他の Engineering Manager のしごと

戦略の策定

担当のチームがその半年で何をするのか、何をしないのか。それを決めるのはチームメンバーのミッション決定権を持っているマネージャがやりやすいと言えるでしょう。

例えば、戦略の提案はメンバーでもできますし、特定の技術領域の技術戦略はメンバーにお任せすることもあります。

コスト管理

コストに関して予算の提示や説明責任があります。例えば SRE は開発支援 SaaS の利用料金や、IaaS / PaaS の利用料金を担当しています。

開発部の組織開発

プロダクト開発部全体の目線で、部長をリーダーとして組織開発を行います。これは組織の設計や組織の問題点の改善も含みます。

具体的な例だとフィードバック文化の醸成・メンバーの成長支援として 360 degree feedback を実施したり、メンバーのキャリア実現のためマネージャ間で新しい業務機会の提示*6を検討したりします。

組織の設計や組織課題を扱うこと自体は必ずしもマネージャじゃないとできないわけではないのですが、人事情報はマネージャ限定情報になるため、マネージャ中心に行っています。

@chaspy がやっているしごと

最後に、僕がこの半年取り組んできた具体的な仕事を紹介します。

組織戦略の決定

期のはじめに部のキックオフがあり、以下のような発表でチームの方向性を打ち出しました。

現状の課題点、それを解決するために必要な技術的な問題と、Team の Capability 獲得という観点で取り組む内容を決定し、伝わりやすいよう "Developer Success" という言葉でテーマを打ち出しました。

この発表時点ではチームメンバーのミッションも決まっており(具体的なチャレンジの一例のスライド参照)この半年まっすぐ進めるようになったかと思います。

People Management

前述したように、メンバーの評価・グレード・ミッション設定はマネージャしかできません。

組織戦略を満たしながら、個人のキャリア実現やモチベーションも満たせる形でミッションを設定します。

また、期中はミッションがうまく遂行できていそうかをコミュニケーション(1on1, meeting)でフォローします。ミッションの中間振り返りも実施します。

基本的に自走できるメンバーばかりなので業務そのものはお任せなのですが、半年という長い期間では予想していなかったことは起きうるので、その際の優先度判断の相談に乗ったり、難しいチャレンジをお任せするメンバーには最初は細かい頻度で会話をして方向性や期待値を伝えるように努めています。

Product Security Engineering

Product Security Engineer という新しいポジションを昨年オープンし、めでたく7月に1名入社しました。

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リクルートにはセキュリティ推進室という、経営課題の視点に立ち全社横断でセキュリティ施策を推進する組織があり、僕はその組織の担当の方と、スタディサプリ小中高というプロダクトに対して何をやるか、やらないかという折衝を主に担当しています。

既存のセキュリティ標準*7にフィードバック*8を行ったり、開発チームとの間に入ってコミュニケーションの問題*9を解決したりしました。

おわりに

私が所属する組織における Engineering Manager のしごとと、実際に SRE Team の Engineering Manager としてやったことを紹介しました。この半期も残り1ヶ月と少しです。今期もメンバーが非常に大きな成果をたくさん残してくれたので、期が終わったらまたブログを書こうと思います。

スタディサプリ小中高開発部は世界の果てまで学びを届けたい仲間を募集しています。

SRE, Product Security Engineer、いずれも Engineering によって組織とプロダクトの生産性と信頼性を両立させる、非常に面白いポジションです。応募は採用ページから。カジュアル面談は @chaspy まで気軽に連絡ください。

brand.studysapuri.jp

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*1:小学・中学・高校までの12年間を意味するhttps://ja.wikipedia.org/wiki/K-12

*2:約80名です

*3:一部は異なるインフラを使っていたりする

*4:こちらも現在採用中です。将来的には別 Team として独立予定です。 https://brand.studysapuri.jp/career/position/product-security-engineer

*5:個人のグレードはマネージャと人事以外には公開されていない

*6:兼務で一部を新しいチャレンジをしたり、チーム移動したり

*7:新規プロダクトを作るときのリスクアセスメントを行う社内標準がある

*8:リクルート内でも多様なビジネス・プロダクトがあるのでその項目が必ずしも対象プロダクトの状況に適した質問になっているとは限らないため、その違いを踏まえてフィードバックをした

*9:お互いのプロダクトの状況を知らない、情報非対称性がある場合に、システムを通じてやりとりするとコミュニケーションコストが高まってしまうため、介入してコミュニケーションパスを作ったりした