スタディサプリ Product Team Blog

株式会社リクルートが開発するスタディサプリのプロダクトチームのブログです

わたしたちがチームであるために"期待合わせ会"をやりました、という話

はじめまして、Web Developer@tricknotesです。
今回はチームの期待を合わせるためのワークショップである「ドラッカー風エクササイズ」をわたしたちのチームで実践してみました、というお話です。

背景

なんでこのワークショップをやってみようと思ったのか…という話をする前に、まずわたしたちのチームの状況をお伝えさせてください。

わたしたちのチームは、ここ半年ほどで多くのメンバーが増えました。
その結果、古くからのドメイン知識に明るい古株層とまだまだドメイン知識の吸収を必要としている新入りメンバー層の間で大きな知識の隔たりがあるという状況になっています。*1

そんな中、歴史的経緯は気にせずいまの開発に集中してほしい古株メンバーと、そういった歴史的経緯を含めて吸収していきたい新入りメンバーの思いがそれぞれある、ということが振り返りの場で明らかになりました。
どちらもチームのためを思っての気持ちだったのですが、思いの方向がずれていると気遣いがすれ違ってしまいチームとしてはもったいない状況ですよね。

そこで、チームの内側の期待合わせの場を設けてみようというトライから、今回のワークショップ開催につながりました。
期待合わせのための手段…ということで、今回はわたしが馴染みがあった「ドラッカー風エクササイズ」に取り組むことにしました。

ドラッカー風エクササイズって?

ドラッカー風エクササイズとはチームメンバー間の期待をすり合わせる効果があるワークショップで、アジャイルサムライの著者であるJonathan Rasmusson氏が紹介しています。

概要としては次の4つの手強い質問に答え、それをメンバー同士で交換するなかで期待をすり合わせていく、というものです。

  • what am I good at? - 自分は何が得意なのか?
  • how do I perform? - 自分はどういうふうに仕事をするか?
  • what do I value? - 自分が大切に思う価値は何か?
  • what contribution can be expected from me on this project - チームメンバーは自分にどんな成果を期待できるか?

わたしは以前からチーム結成の際にこのワークショップを行うことが多く、実際によさを感じていたため取り組むことにしました。

また、わたしが強く影響を受けた記事としてGMOペパボさまのブログを紹介しておきます。

tech.pepabo.com

今回のワークショップの内容

今回の目的は「お互いの期待を知ること」と設定しました。
すり合わせるところまではスコープに含めておらず、まずはお互いがどういう期待があるのかを見える化してみよう、というのが狙いです。

一度期待の差分が見えるとその後の活動に自然と反映されるかもしれませんし、またもしすり合わせの場が必要であればあらためてその場を設ければよいため、限られた時間をお互いの開示に使うのがわたしたちのチームにとっては効果的だと考えたからです。

この目的のために、先ほど紹介したドラッカー風エクササイズの質問そのままではなく内容をアレンジした質問でワークショップを行いました。

  • 自分は何が好き・得意か?
  • 自分はどうやってチームに貢献したいか?
  • 他のメンバーに期待することはなにか?

なぜアレンジしたかというと、今回のワークショップのゴール設定に対してはドラッカー風エクササイズの元の質問をアレンジした方がよい効果が得られると考えたためです。

また各質問の意図としては、次のとおりです。

  • チームという枠組みを考えない場合に、素の自分ができること・やりたいことを教えてほしい
  • チームという枠組みを考えた場合に、自分はどういったことで力になれそうか教えてほしい
  • 他のメンバーの得意なこと・貢献してくれることを知った上で、どういう部分を助けてほしい・もっと貢献してほしいと思うか教えてほしい

上から順番に答えていくことで、自分の気持ちを他のメンバーに伝えたあとで他のメンバーからのフィードバックを得られるという構成になっています。

当日の流れ

せっかくなので、当日の流れを詳しくお伝えします。

ゴールの確認

まずは、このワークショップではなにを目指すとよいのかを説明しました。

  • ゴールは「お互いの期待を知ること」である
  • 期待がすり合わなくても、(この場としては)問題ない
    • それはこの会のスコープ外
    • そして知るだけでも意外と前進する(はず)
  • ただし、大きな声で伝えてみましょう

これは、わたしがこの会に期待していることの伝達になっています。

ルールの説明

次に、この会の進め方を説明しました。

  • 使う道具の説明
    • ホワイトボード
    • 付箋
    • サインペン
  • 各質問毎に、付箋を色を変えること
  • 書いた付箋は、前のホワイトボードに貼り付けてみんなに見えるようにすること
  • 付箋の文字は大きく簡潔に書くこと
  • 書き損じた場合は、付箋を破り捨てて新しく書くこと

また、まずはお試しで付箋に今日食べたランチのメニューをそれぞれ書いてそれをすぐに破ることで、ここで説明した内容を参加者全員で体験しました。

質問の説明

今回の会での質問内容と、答え方を説明しました。

  • 質問に対してひとつずつ回答していきます
  • タイムボックスで回答を記入しホワイトボードに貼り付け、全員分の回答が出揃ったらひとりひとり読み上げていきます

やってみてどうだったか?

なんとなくは普段の生活では気づいていなかった、「実はあのひとはこういうことにも興味があったのか」とか「こういうことを期待されていたのは意外だった」という発見がありました。
もちろん、自分が得意なことと期待されていることに差分があるということは多々ありますが、まずはその差分をお互いに知っておくだけでも上手くいくということは多いのではないでしょうか。
これはやってみたあとに起こった変化の体感ですが、普段のモブ・ペアプログラミングの際にどうなってほしい・どうやっていきたいと言った"期待"の話をすることが増えたように感じます。*2

また、普段チームではオンラインツールをメインで使っていることもあって、アナログツールならではの制約と柔軟性によさを感じてくれたメンバーもいたようでした。

付箋を出し切った様子です

小上がりスペースで期待合わせ会を開催しました

終わった後の発見の様子です

まとめ

いかがでしたでしょうか。
この記事では、わたしたちのチームの課題とそれを解決するために実施したワークショップについて説明しました。

長い時間を一緒に過ごすメンバー同士であっても、暗黙的に期待していることやすれ違いがあると気持ちがだんだんとずれてきてしまいます。
その危うさをお互いが認識した上で、期待を伝え合う場があったり期待合わせが習慣になっていたりするとお互いにとって無理なく過ごせるチームになるのではないでしょうか。

よいチームで開発していきたいと考えている開発者の方にとって、この記事がなにかのヒントになれば幸いです。
もし「自分たちのチームでもやってみたいけど不安だ・もっと詳しく聞いてみたい」などありましたら、お気軽に@tricknotesまでお声掛けください。

*1:ちなみに、わたしが一番の新入りです

*2:この話はまた別の機会にでも