こんにちは。ソフトウェアエンジニアの @ttokutake です。
今回はスタディサプリ小中高プロダクト開発部の技術戦略横断ワーキンググループをリードしていたときに 実践していたことや気をつけていたことを書き出してみようと思います。
もう少し具体的に言うと、ワーキンググループの活動においてどのようにファシリテーションを工夫したかという内容になります。
技術戦略横断ワーキンググループとは
詳しくは以前書いたブログ 技術戦略横断ワーキンググループの活動報告 の この部分 をお読みいただければと思います。
改めて簡単にグループについての説明をすると、以下のような感じです。
- 「組織横断で解決すべき技術課題にメスを入れていく」のが技術戦略グループ
- 技術戦略グループの中にいくつかのワーキンググループがある
- 「特定の分野に限らない課題・議題を取り扱う」のが技術戦略横断ワーキンググループ
技術戦略グループには明確な目的・目標があります。
- 目的
- プロダクト開発組織とそのシステムをより変化に強くする
- 目標
- 技術的なビジョンと方針の策定
- 技術的課題・負債をコントロール下に置く
- 改善サイクルの確立と自己診断能力の獲得
この中でも「技術的課題・負債をコントロール下に置く」という目標を主に扱っているのが技術戦略横断ワーキンググループです。
リードの役割
技術戦略横断ワーキンググループにおいて、リードのメインの役割はとにもかくにも「ファシリテーション」です。 「優れた技術力を有している」とか「素晴らしいアイデアを出せる」みたいなことはそこまで求められていませんでした。
活動の特徴
ワーキンググループの活動について特徴を簡単に述べると「完全なゴールはないけど継続していく活動」と言えます。
「技術的課題・負債をコントロール下に置く」という目標があるとはいえ、 「これをやったら完全に活動を終えてよい」というゴールはあまり想像できませんし、 少なくともそんなゴールに到達するのは容易ではなさそうです。
また「技術的課題・負債をコントロール下に置いた」と自信を持っていえる指標の定義も難しいです。
それでもスタサプの現状に対して目標が正しいと思えるので、継続することに価値がありそうな活動だと自分たちは思っています。
一番意識したのは「進んでる感」を出すこと
こうした活動において、まず大事なのは十分達成可能であると思える小目標を立てることだと思いますが、 これに関しては特に意識せずともできることだと思います。
技術戦略横断ワーキンググループにおいては、例えば 「来年度の開発計画を決め始める10月までに対処すべき負債をまとめる」という小目標がすでに存在していました。
それ以外にも他にやるべきことは何かをみんなで考える機会は必然的に発生したので、 うっかり忘れて小目標を立てないということはないと思います。
一番大事なのは小目標をちゃんと達成していくことですが、 小とはいいつつもやることが多いみたいなタスクもあり、 これを如何にだれずに進めていくかが活動における重要なポイントでした。
例えば、自分たちの場合は技術的負債を開発者から募ったところ70以上の負債が挙げれられ、 負債をまとめるために何をやるにしても非常に時間がかかりました。
ではだれないようにするために何が重要であったかを自分なりに思い返してみると、 「進んでる感」を出すことではないかと考えました。
もちろん実際に進むことが重要です。 しかしただ進んでいるだけではまだ問題はありました。 実際には進んでいるはずだけど終わりがみえなかったり、 進んでいる感覚を持てないと周りから不安や不満が感じられました。
また実質的には何も進まなかった場合でも、 取り組んだこと自体に納得感が持てているかどうかがとても重要で、 納得感があれば「ま、ダメだってことに気づけてよかったね」とポジティブに考えてもらえる傾向が見受けられました。
これらを雑にまとめた言葉が「進んでる感」を出すというもので、 リードをする上で自分はこれを一番意識するようになっていました。
実践したこと
では「進んでる感」を出すために自分が具体的に実践したことを挙げていこうと思います。
これらは自分の場合は運良く実践できましたが、状況によっては実践が難しいこともあると思いますのでご注意ください。
MTG (Meeting) の前日にはかならずアジェンダを告知する
これは How Google Works で書いてあったのを真似しました。
エリック・シュミットが言っているので間違いありません。というのは冗談で、 これをやっておくことで「毎回は参加したくないけど、興味ある内容のときは参加したい」みたいな人には一定喜ばれました。
でも一番の効果はこれをやることで自分が「準備を怠らなくなる」ことだと思います。 何も準備していなかったらアジェンダ出せませんからね。
以下は実際に告知していたときの様子です。
この先何をやればいいかわからないときはそれをみんなで決める
何もリードがすべてを決めていく必要はなく、惜しまずみんなの力を借りました。
しかもこれから何をしていくかという内容は、今後の活動の方向を決める重要なものです。 時間をかけてでも決めるべきことであり、じっくりと考える必要があります。
実施するワークの素案は雑でも良いので用意する
マクドナルド理論 と呼ばれるものをご存知でしょうか?
これに近い感じなんですが、「やること決めるためのワークします!内容は白紙です!」 ではなく「やること決めるためにまずは10分間自分の意見を書き出してもらって、そのあと議論と投票して優先順位を決めようと思うけどどう?」 みたいな感じで雑でもいいから素案を出しておくと良いです。
もしそれで良いとなったらMTGの進行がスムーズになるし、ダメならダメで代わりにどうするかの意見がメンバーから出しやすくなります。
このとき素案を用意する側の心構えとして、自分のアイデアにこだわりすぎないのが重要です。 自分のアイデアが却下されたとしてもそれは全然問題なくて、 むしろより良いアイデアを出すことを促せたなくらいに思うと良いです。
ファシリテーションという役割では繰り返しになりますが自分が素晴らしいアイデアを出すことは求められていません。 最終的に出た結論が良いアイデアになっているかどうかの方が重要ですし、 その方がおそらく評価もされて給料が上がるとポジティブに考えても良いのではないでしょうか。
全員の意見を広く聞きたい時は書き出すワークを実施する
「何か意見ある人いますか?」みたいに口頭できくだけだと喋るのが得意な人の意見ばかりになってしまいます。 弊社はすっかりリモートワークに移行しており、ビデオ通話や音声通話でのMTGばかりなので特にそう感じられます。
また誰かが喋ってる間は他の人は意見を出せず、同期的な処理になってしまって効率が良くない場合が多いです。
当然ながらいろいろな人の意見を聞いた方がよいアイデアになる可能性は上がるので、 なるべく同時にみんなの意見を出すタイミングを作っておくと良いと思います。
こうすることでいろいろな意見が集まるし、 自分が書いたり他の人が書いたものを眺めることで自分の考えも整理されて、 そのあとの議論の質が上がっているように感じました。
ちなみに自分たちは Miro や Google Docs を使ってこの手のワークを実施します。 例えば以下のように非同期で付箋を貼っていったりするイメージです。
小目標に期日があるなら間に合うかどうかを逆算する
取り組んでいる作業が期日に間に合うかどうかを確認するのはとても大事です。
自分たちの場合は負債をまとめるためのワークを2,3回実施したあとに、 「負債1つあたりにかかった時間」と「残りの負債の数」をもとに期日に間に合うかどうかの計算をしました。
その結果、「このまま続けると半年以上かかるので間に合わない」という結論が出たりもしました。
宿題を出す
技術戦略横断ワーキンググループの活動は毎週1時間のMTGが基本的な活動でした。 しかし、上記の通り期日に間に合わないような場合もあり、宿題を出すことでMTG以外の時間も活用するようにしました。
書き出すワークを採用していたこともあり、「MTGまでに事前に書き出しておいてね」と非同期に実施しやすかったのもポイントかと思われます。 非同期で進められるものはなるべく非同期にすることでMTGの時間をより有意義に活用できました。
毎回のMTGに短い振り返りを入れる
こちらは @chaspy さん発案ですが、毎回のMTGのあとに5~10分程度の振り返りの時間を設けました。 これをすることでMTGの進め方でよかったことや改善した方が良さそうなことを細かく確認でき、 ファシリテーションをやっていく上で大いに助けていただきました。
特にMTGの進め方が安定していない時期にはとてもオススメです。
ワーキンググループで実際に振り返っていたときの様子を参考までに載せておきますので、雰囲気だけでも感じていただけたらと思います。
まとめ
今回は自分が技術戦略横断ワーキンググループをリードしていく上で実践したことをご紹介しました。
ここまでいろいろと書いてきましたが、一番重要なのはどんな会議体でも「準備を怠らない」ことだと思います。 *1
今後も改善や工夫できることを模索して、また何か成果が出ればブログにしようと思います。
今回のブログについて、よくわからないことやご指摘、またオススメのメソッドなどありましたら、 Twitter などでお気軽にご連絡ください。
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*1:準備の必要性についての話は 資料の準備が無い会議滅びろ委員会 というブログがオススメです。